計算が面倒でケアレスミスをしやすい部分積分を楽にミスなくおこなう計算法に、テーブル法というのがあります。
これについて浅井英臣先生が立ち上げてるサイト「感動する数学・物理」にて、テーブル法の使い方が紹介されていますが、
今回、浅井先生のサイトを補完するつもりで、私のブログではそのテーブル法の厳密な証明を紹介しようと思います。
なお、部分積分のテーブル法のそもそもの具体的な使い方をまだ知らない方は、
(テーブル法はそもそも計算法ですから、公式とは違いますので)下記の証明より先ずは上記のリンク先から浅井先生のサイトをご覧くださいませ(僕のブログはあくまで補完です)。
と、厳密な証明だと宣いましたが、実際の僕自身は数学の素養が深くないのであまり内容を鵜呑みになさらないでくださいね。
もちろん、下記のかなり長文になるものを読んでもらう人々に対して、その内容の(出来たこと出来なかったこと含めて)正確性を高めるように努めますので、どうか付き合っていただけたらと思います。
では、まえがきが長くなりましたが、どうぞ。
これについて浅井英臣先生が立ち上げてるサイト「感動する数学・物理」にて、テーブル法の使い方が紹介されていますが、
今回、浅井先生のサイトを補完するつもりで、私のブログではそのテーブル法の厳密な証明を紹介しようと思います。
なお、部分積分のテーブル法のそもそもの具体的な使い方をまだ知らない方は、
(テーブル法はそもそも計算法ですから、公式とは違いますので)下記の証明より先ずは上記のリンク先から浅井先生のサイトをご覧くださいませ(僕のブログはあくまで補完です)。
と、厳密な証明だと宣いましたが、実際の僕自身は数学の素養が深くないのであまり内容を鵜呑みになさらないでくださいね。
もちろん、下記のかなり長文になるものを読んでもらう人々に対して、その内容の(出来たこと出来なかったこと含めて)正確性を高めるように努めますので、どうか付き合っていただけたらと思います。
では、まえがきが長くなりましたが、どうぞ。
まずは証明前の準備から
f(x)やg(x)をl回微分可能な関数をし、簡単のため f や g と表記する。また、その第 l 次導関数をf(x)^(l)やg(x)^(l)を書く。
まず、積の積分を部分積分の公式を使って具体的に解く。
ここで部分積分の公式とは
ここで部分積分の公式とは
であるので、積の積分は
と計算できる。
上記の式は数列とその和になっていると予想できる。
これを積分の項と他の項の二つに分けるとその数列は
上記の式は数列とその和になっていると予想できる。
これを積分の項と他の項の二つに分けるとその数列は
ではないかと予想できる(あくまで予想です)。
つまり、積の積分を「部分積分を使って解く」とは
であり、つまり
この数列I_nの初項である(3)を解くのだと予想できる(これも予想です)。
そして、従来の部分積分の公式とは、この数列I_nの漸化式
の I =0 の時のことだと予想できる(これも予…)。
(2)と(3)と(4)の式の予想が確かに成り立つかの証明は、最後の最後に後述します。
ここまではテーブル法の証明のための事前準備となります。
では、ここで本題のテーブル法ですが、
これは(2)の式の数列を(4)の式の関係に基づいて、次のように、「視覚的に表のように」並べます。上記からテーブル法とは、(2)式の= と乗法記号の × を矢印→に変え、積分記号のインテグラルを省略したに過ぎないものなのだと分かります。
しかし、したに過ぎないことであろうと、これが非常に大きな効果を持っていることは、小学校から馴染みのある四則演算の「筆算」や因数分解の「たすき掛け」に「組み立て除法」の経験から、誰もが納得できることだと思います。
いわばテーブル法とは、足し算や掛け算、因数分解を解くさい、計算ミスを防ぐために式を横一列にズラズラを計算しないで、当たり前に筆算やたすき掛けや組み立て除法をしてきたのを部分積分でもやっている、というだけだと分かります。
繰り返しますが、これが部分積分での計算ミス防止に非常に効果のあることだというのは誰もが納得できると思います。
もう少し突っ込んだことを言いますと、テーブル法にしろ、因数分解のたすき掛けにしろ、
このような計算法でケアレスミスを防げる理由は
このような計算法でケアレスミスを防げる理由は
計算を表(テーブル)という視覚に訴えた方法によって計算することにあります。
として計算してます。
以上がテーブル法の厳密な証明になります。
以上がテーブル法の厳密な証明になります。
あとは浅井先生のサイトでの解説にしたがって、テーブル法を使いこなしていってください。
因みに浅井先生のサイトの解説を要約して纏めますと、以下のような説明になります。
テーブル法の使い方の要約
テーブル法の一般式を個々の積分計算に使うとき、部分積分を使って解くとは数列 I_n の初項である(3)の式を解くことであるのを考えると
- 数列 I_(n+1) が積分定数Cになるので、(5)式のテーブル法の左側に描かれる数列 I_(n+1)は描かずに省略して、右側に描かれてる数列 a_n 全部を足します。
(ⅱ)I_(n+1) の中に初項の I =0 が現れるとき(同サイトの解説でのe^x sin xのような場合)
- 初項 I_0 つまり求める積分を文字 I に置いて解きます。このときは(5)式のテーブル法の左側に描かれてる数列 I_(n+1) は、紙に描くのは末項だけになります。いつ I_(n+1) を書くか(テーブルを止めるか)は f を微分しつづける際に I_0 の中に f と同じ関数が現れたときが目安になります。
(ⅲ)数列 I_(n+1) が簡単な積分になるとき(同サイト解説での∫1dx のような場合)
- そのまま直接積分していきます。
(ⅳ)数列が簡単な積分にならないとき(同サイト解説での-∫2log x dx のような場合)
- ダブルテーブルで解きます。
しかしこのダブルテーブルですが、logが入る部分積分の場合は、テーブルの微分と積分を一回するたびに I_(n+1) を(たぶん)書くことになります。ですので、これは「普通の部分積分をしてるのと変わらない」なということに最近になって気づきました(脚注)。
要するにlogが入る計算ではテーブル法で解いても良いけど、解いてもあんまり得にならないようです。
ここから先は部分積分を更に速く計算したい人に向けて。
さて、計算ミスを防ぐのに有効なテーブル法ですが、暗算が得意などで普段から計算ミスをしない人は、表(テーブル)を描かずにあえて横にズラズラと計算していっても良いと思います(詳細は分かりませんが、長谷川進さんという先生が運営される受験数学BLOGにも、その計算法が紹介されているようです)。
どういうことか具体的に言うと、
積の積分を「部分積分を使って解く」とは(3)の式である
を解くことであり、
I_n と a_n は(2)の式で表せるなら
I_n と a_n は(2)の式で表せるなら
と表せるわけですから、テーブル法で下に向かって、微分ビブンビブン、積分セキブンセキブン、とやっていたのを横に向かって、ジャンプするように微分ビブンビブン、積分セキブンセキブン、とやっていくことも出来ます。
これだとテーブル法と違って答案に直接、計算を書いていけますから制限時間のある入試本番に有効です。
筆算やたすき掛けは計算用紙にしか書かないのが普通なようにテーブル法も計算用紙にしか書かないのが普通でしょうからね(範囲外だから受験に使ってはいけないという意味ではありません)。
ただし、従来の部分積分より遥かに計算ミスをしにくくなるとはいえ、この方法だとテーブル法より計算ミスをしやすくなりますので、自分の計算レベルが中級者以上になってからする計算法だと思います。
具体例を(分かりやすくするため極端なものを)挙げますと、テーブル法の場合だと
これだとテーブル法と違って答案に直接、計算を書いていけますから制限時間のある入試本番に有効です。
筆算やたすき掛けは計算用紙にしか書かないのが普通なようにテーブル法も計算用紙にしか書かないのが普通でしょうからね(範囲外だから受験に使ってはいけないという意味ではありません)。
ただし、従来の部分積分より遥かに計算ミスをしにくくなるとはいえ、この方法だとテーブル法より計算ミスをしやすくなりますので、自分の計算レベルが中級者以上になってからする計算法だと思います。
具体例を(分かりやすくするため極端なものを)挙げますと、テーブル法の場合だと
と、計算をする右側の項が次のように、筆算のように縦書きになります。
対して、(6)の式のように横に向かってジャンプするように部分積分する方法だと
このように横並びの数式になるので、最後に整理するとき計算ミスしやすくなります。
改めて纏めますと、従来の部分積分やテーブル法や直接に横向きにする計算法を、多項式の展開や因数分解に例えて比較しますと、その違いは原則として
多項式の展開や割り算を
普通に計算するのに相当するのが、従来の部分積分。入門者向け
たすき掛けや組み立て除法に相当するのが、テーブル法。初心者向け
次のリンク先の動画のように横へ一気にズラズラと計算するのに相当するのが、横向きに直接する計算法。中級者以上向け
多項式の展開や割り算を
普通に計算するのに相当するのが、従来の部分積分。入門者向け
たすき掛けや組み立て除法に相当するのが、テーブル法。初心者向け
次のリンク先の動画のように横へ一気にズラズラと計算するのに相当するのが、横向きに直接する計算法。中級者以上向け
ということになります。
自分の計算力、暗算力の熟練度に合わせて習得していってください(これらの入門初級中級の分類についての考えは駿台文庫の「数学の計算革命(リンク先に他の計算動画が全てあります)」や文英堂の「合格る計算」が参考になりました)。
しかし、原則としてはそうですが、関数 f や g が個々のケースによって、この分類どおりにしなくても良いと思っています。
僕にはその個々のケースをすべて把握できていないのですが、大まかに分かっているのだけでも提示しておこうと思います。
- (高次の多項式)×(指数関数)と(高次の多項式)×(三角関数)のケースは、上の原則の分類のとおりだと思っています。
- (低次の多項式)×(指数関数)や(低次の多項式)×(三角関数)や(指数関数)×(三角関数)のケースは、初心者であっても横向きに一気に計算しても良いと思います。
- logが含まれるケースは従来の部分積分で良いと思います。
これの更に細かい場合、つまり三角関数でもどんな三角関数かとか、どんな指数関数なのかでも、もしかしたら変わるかもしれません(はっきりしたことは調べられていません)。
それでは、横に向かって計算し、答案へ直接に書いていく計算法を具体的に説明します(長谷川先生のブログに解説されてる手順は一部で、詳細は僕には分からないので先生とあえて違う方法で解説します脚注2)。
中級者向けの計算法の具体的な手順
第1ステップ
微分からスタートします。積分ではなく、微分からジャンプしていきます(理由は後述)。あと、ジャンプ後から微分です。ジャンプ前ではないです(f^(0)は元の関数ですので)。どこまで微分するかは上記の(ⅰ)と(ⅱ)を参照。
このとき、+-の符号も交互に変えながら書きます(図では-1の累乗になってますが気にしないでください)。
第2ステップ
積分記号を最後の関数 f に付けます。当然このとき微分してゼロになるなら付けないです。(もちろんゼロも書かずに代わりに積分定数Cを書きます)
積分記号を最後の関数 f に付けます。当然このとき微分してゼロになるなら付けないです。(もちろんゼロも書かずに代わりに積分定数Cを書きます)
第3ステップ
積分記号の直前までジャンプして積分していきます。このとき微分のジャンプから、一段、左にズレてジャンプしていることに注意してください(このずれがテーブル法のナナメの計算に当たります)。
第4ステップ
積分記号の中には、積分しないでそのままコピーします。第1ステップで微分からジャンプするのは何処で積分しないのかを知るためです。
第5ステップ
あとは各項を計算し、整理して終わりです。
最後に各ステップをまとめた画像です。
あとは各項を計算し、整理して終わりです。
最後に各ステップをまとめた画像です。
以上で、テーブル法の厳密な証明と、その効用についての解説を終わります。
〈ⅰ〉
(2)式において、n = 0 のとき、I_n は
ですが最後に、今まで後回しにしていた(2)と(3)と(4)の式の予想が確かなのかを、これから証明します。
[Ⅰ]
f(x) や g(x) をl 回微分可能な関数とし、簡単のため f や g と表記する。また、その第 l 次導関数を f^(l )、g^(l ) と書く。〈ⅰ〉
(2)式において、n = 0 のとき、I_n は
であり、これは(1)式で部分積分するまえの式と一致する。
〈ⅱ〉
次に n=k で(2)式の I_n が成り立つを仮定し、I_k を部分積分すると
となり、I_n においては n = k+1 でも成り立ち、a_n においては n = k が成り立つ。
〈ⅰ〉、〈ⅱ〉により、数学的帰納法から全ての n で(2)の式が成り立つ。
[Ⅱ]
次に(3)の式が成り立つことを証明する。
[Ⅰ]から、(7)の式は、特定の自然数 k だけでなく、l より小さい全ての自然数 n において成り立つことが証明される。
よって(7)式は、次のように(4)の式に書き換えることができる。
これで、I_n を部分積分すると、I_n と a_n には(4)の式の関係があることが言えた。
ここで(4)式は数列の漸化式であり、両辺の項を移項すると
であり、これは数列 I_n に対して-a_n は階差数列を表すので
とすることが出来る(階差数列を表す漸化式⇒一般項の証明についての注意)。
よって(3)の式が証明された。
以上の[Ⅰ]と[Ⅱ]により、(2)と(3)と(4)の式が証明されたので、
f や g を l 回微分可能な関数とし、その第 l 次導関数を f^(l)、g^(l) としたとき、
f と g^(l) の積の積分を「部分積分を使って解く」とは、(3)の式を解くことであり、
I_n と a_n は(2)の式で表せて、(4)の式の関係を持つということが、確かに言える。
これで全ての解説は終わりです。長文を最後まで読んでくれてありがとうございます。
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