2015年7月29日水曜日

日本化学会が「化学の新研究」の curved arrow をデタラメだとしたことの真偽について

11月4日、全文内容更新 : 日本化学会会員の化学者が、捏造記事でもって受験参考書を批判している疑いに関しての追記
11月15日、内容更新 : 下記の curved arrow の修正一覧を更新私の記入ミス

私のAmazonレビューでも概要を書いているのですが、初めてこの記事を読まれる方のことを考えてAmazonレビューと内容を重複して説明しようと思います。

よく世の中には、ネットにしろ、テレビにしろ、本にしろ、昼休みの世間話にしろ、デマや誤報に捏造や噂話というものが蔓延っていますが、

今回はとある大学受験参考書についての話です。

 

その著者や日本化学会会員の化学者などにメールで問い合わせたり、大学の専門書を調べて判明したことを書きました。


事の発端は旧版の「化学Ⅰ・Ⅱの新研究」と新版の「化学の新研究」(卜部吉庸著)についてネット上に次のようなプリントのキャプチャ画像が投稿されたのが始まりのようです。


 私はこれをtwitter上で発見しました。現在この投稿をしたアカウントは凍結になっていますが画像自体はネット上のいたるところに広まっているでしょう。
というか、下手にソースが無くなると真実の追求が困難になるから拙いんですよね(理由は後述)。

私はそこで、旧版の「化学Ⅰ・Ⅱの新研究」 と新版の「化学の新研究」の両冊をチェックしました。
その結果、実際には新版の「化学の新研究」では curved arrow の間違いは大部分が修正済みでありました。
未修正の curved arrow もそれなりに残されているのですが、これは著者の化学の無知によって未修正のままなのではなく、理由があってワザと、意図的に修正しなかったということを、問い合わせて卜部先生ご本人から回答をいただいています
このご回答の詳細についても下記に転載しました。

これは駿台文庫「原点からの化学 有機化学<5訂版>」(石川正明著)の前書きにも同様のことが書いてあります(ただ卜部先生と石川先生で curved arrow を直さない理由が細部においても同じであるかは分かりません)。

またこのtwitter投稿とは別に、旧版の「化学Ⅰ・Ⅱの新研究」には curved arrow の誤用があるということが、化学雑誌の化学と教育61巻7号に投稿された高校化学における有機電子論東京大学大学院総合文化研究科教授 村田滋 著という論説文で指摘されています。

そして、村田滋先生のこの論説文では書籍名を伏せて批判しているということにも注意してください。


なのでこの論説文からだけでは、curved arrow の誤用がある大学受験参考書というのが、ドレの事を言っているのかこれだけではまだ確定できません。つまり、旧版の「化学Ⅰ・Ⅱの新研究」なのか新版の「化学の新研究」なのか、それともその両冊なのか、いや、そもそも全く別の参考書なのか確定できないということです。

これらをハッキリするために私は、村田先生や日本化学会などに問い合わせました。
しかしここで村田先生が批判されてる受験参考書が実際には何であるのかの追求は、いったん脇に置いて後で述べることにして次のことを最初に述べることにします。 

[1] 卜部先生が本当に著書にデタラメな curved arrow(有機電子論)を描いてるのかどうかの前にそもそも論として、元々の大学化学の有機電子論、それ自体は本当に正しい理論なのか?


 そこで村田先生がこの論説文の中で主張される、有機電子論とは本当にスゴイ理論で、curved arrow (曲がった矢印、巻矢印)の表記法は優れた手法なのかどうか(村田先生はきわめて高い一般性や、統一的に表記できると述べられています)、私は大学の専門書などと調べてみました。

その結果、実際には大学レベルの有機電子論が、正しい理論なのかどうか科学的な証拠はないそしてその裏付けのない理論から開発された 大学化学のcurved arrow の表記法(巻矢印表記法)不完全な表記法である可能性が強いことが分かりました。このことの詳細は後述しますが、まずは簡単に述べます。

まずは、私が調べた文献から、誰が読んでももっとも分かり易い、次のものを引用します。